医療チームの一員として:トレーナーに求められる連携スキル

2026年04月13日 | メディカルフィットネス

「チームの一員」として動くとはどういうことか

「医療連携トレーナー」という言葉が示すとおり、医療機関と連携して活動するトレーナーに求められることがあります。

それは、フィットネス指導の専門性に加え、チームの一員として動く姿勢とスキルです。

しかし、「医療機関と連携する」といっても、具体的に何をすれば良いのかわからないというトレーナーも少なくありません。

 本記事では、医療チームの一員として活動するために必要な連携スキルを、報告書作成・カンファレンス参加・医療職とのコミュニケーションという3つの側面から解説します。

3月の記事「リスク管理で築く信頼関係:医療連携トレーナーの安全配慮が専門性を高める」でも触れたとおり、報告・連絡・記録が連携の基盤となります。 

今回はさらに踏み込んで、チームの中でトレーナーがどう動くかを具体的にお伝えします。

報告書作成:医療職に「伝わる」書き方

報告書の目的を理解する

トレーナーが医療機関に提出する報告書は、「活動記録」ではなく「チームへの情報提供」です。 

医師や看護師が読んで「次の診察で何を確認すればいいか」「処方内容を見直す必要があるか」判断できることが、良い報告書の条件です。

医療職が知りたい情報を優先する

報告書には、医療職が診療判断に使える情報を優先的に記載します。 

具体的には、セッション前後の血圧・心拍数の数値、運動中に観察した異常サイン、クライアントが訴えた自覚症状、運動を中止・調整した場合はその理由と経過です。

「今日は元気そうでした」という主観的な感想より、「安静時BP 122/80mmHg、運動中最高心拍数108bpm、動悸の訴えなし」という客観的なデータが、医療職にとって有用な情報です。 

数字と観察事実を中心に書くことを習慣にしましょう。

A4・1枚・5分で書ける形式にする

報告書は、毎月の継続した提出に意味があります。 

完璧な報告書を月1回書くより、シンプルな書式で毎月届ける。

そのほうが連携の継続に繋がりやすいです。 

項目を固定し、空欄を埋めるだけで完成するフォーマットを医療機関と相談して作成することが、実践的な解決策です。

カンファレンスへの参加:準備と発言のポイント

カンファレンス前の準備

カンファレンスに参加する際は、事前に「自分が報告すべき内容」を整理しておきます。

直近1ヶ月のセッション回数・達成状況、バイタルデータの傾向、気になった言動や体調の変化、クライアントが話していた生活上の変化(睡眠・食事・仕事のストレスなど)を事前にまとめておくと、発言がスムーズになります。

医療用語への対応

カンファレンスでは、医療職が日常的に使う専門用語が飛び交うことがあります。 

わからない用語が出た場合は、その場で「確認させてください」と聞くことが、プロフェッショナルとしての正しい姿勢です。 

わかったふりをして誤った理解のまま指導を続けるのは危険です。

よく使われる医療用語(HbA1c・eGFR・RPE・β遮断薬など)については、事前に意味と数値の読み方を学んでおくと、カンファレンスでの理解が深まります。

発言のタイミングと内容

カンファレンスでのトレーナーの役割は、「現場の情報を伝えること」です。 

「医師の前で意見を言いにくい」と感じるトレーナーも多いですが、クライアントの日常的な姿を最もよく知っているのはトレーナーです。 

「先生、先月から右膝を気にする様子が見られています」という一言が、診察での見逃しを防ぐことがあります。

事例:複合疾患クライアントへの多職種連携支援

O氏(61歳男性・仮名)

疾患:2型糖尿病(HbA1c 7.8%)、高血圧(BP 146/88mmHg)、軽度慢性腎臓病(eGFR 58mL/min) 処方内容:有酸素運動・週3回・RPE 11〜12・1回25分、筋力トレーニングは軽負荷で週2回

担当トレーナーは、毎月の報告書にバイタルデータと「O氏がセッション後に『最近、夜中に足がつる』と話していた」という観察事項を記載して提出しました。 

翌月の受診で医師がこの情報をもとに確認したところ、マグネシウム不足が疑われ、栄養指導と処方変更につながりました。

担当医から「現場の情報がとても助かります」とフィードバックがあり、以降の連携が一層スムーズになりました。 

3ヶ月後、HbA1c 7.8% → 7.1%、BP 146/88mmHg → 132/82mmHg。

O氏は「病院とジムが同じチームみたいで、安心して続けられた」と話しています。

よくある失敗と対策:「報告の優先順位を下げてしまう」問題

忙しい日々の中で、報告書の作成やカンファレンスの準備が後回しになることは珍しくありません。 

しかしこれは、連携の信頼を少しずつ損なうリスクがあります。

対策として、報告書の作成を「セッション後5分以内にメモする」習慣が有効です。 

セッションが終わった直後に数値と観察事項をメモするだけで、月末の報告書作成が大幅に楽になります。 

「記録は現場を離れる前に」というルールを自分に課すことが、継続的な連携の実践につながります。

まとめ

医療チームの一員として機能するためには、報告書作成・カンファレンス参加・医療職との日常的なコミュニケーションという3つのスキルが不可欠です。 

「現場のことを一番知っているのはトレーナー自身」という自信を持ち、その情報を医療職に積極的に届けることが、チームとしての連携を強くします。

医療チームの中でトレーナーとしての役割を果たすことが、クライアントの継続支援を支えるとともに、医療連携トレーナーとしてのキャリアを確かなものにします。

Doctor’s Fitnessでは、医療機関と連携した運動習慣定着プログラムを提供しています。
患者さんの継続的な健康管理をお考えの医療スタッフの皆様、お気軽にご相談ください。

【監修】宮脇 大(みやわき ひろし)
Doctor’s Fitness代表医師/循環器内科医
元大阪大学医学部附属病院/循環器内科(重症心不全・心臓移植)スタッフ
大阪府スマートヘルスプロジェクトアドバイザー

本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人の状態に対する医学的アドバイスではありません。連携モデルの導入にあたっては、各医療機関の方針や地域の状況に合わせて調整してください。

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