運動処方箋を渡した患者さん。
「運動は続けたいけど、どこに行けばいいの?」
との相談を受けることがあります。
運動療法が必要な患者さんだけではありません。
疾患予防や健康維持のため運動習慣を身につけたい方は、
安全で継続しやすい運動環境を整えることは大変重要です。
そこで活用したいのが、健康増進施設認定制度です。
健康増進施設は、厚生労働省が認定する安全で効果的な運動施設。
患者さんに安心して紹介できる環境が整っています。
本記事では、健康増進施設認定制度を活用した
患者さんの運動習慣定着支援について解説します。
健康増進施設認定制度とは
健康増進施設認定制度とは、
厚生労働省が定める安全かつ
効果的な運動施設の認定制度。
この制度は、国民の健康づくりを推進するため、
一定の基準を満たした運動施設を認定することで、
質の高い運動環境の提供を目的としています。
健康増進施設には、いくつかの種類があります。
運動型健康増進施設は、
運動を主体とした健康づくりを行う施設。
温泉利用型健康増進施設は、
温泉の利用と運動を組み合わせた
健康増進プログラムを提供します。
また、運動型の中でも特に医療との連携を重視した施設は、
指定運動療法施設としての認定も受けることができます。
認定を受けるためには、専門的な知識を持つスタッフの配置のほか、
適切な運動設備の整備、安全管理体制などの基準を満たす必要があります。
具体的には、健康運動指導士をはじめ、
健康運動実践指導者など有資格者が常駐。
利用者一人ひとりに合わせた
運動プログラムを提供します。
また、AEDの設置や緊急時対応マニュアルの整備など、
安全面への配慮も義務付けられています。
指定運動療法施設を利用した場合、
医療費控除の対象になることも。
医師の指示に基づき、運動型健康増進施設で運動療法を行った場合、
その利用料金が医療費控除の対象に認められることがあるからです。
健康増進施設を患者に紹介するメリット
健康増進施設を患者さんに紹介すれば、
数多くのメリットが得られます。
まず、専門スタッフによる安全な運動指導が受けられます。
スポーツジムでは、利用者が自由に運動するスタイルが一般的です。
健康増進施設では専門資格を持つスタッフが
個別に運動プログラムを作成します。
患者さんの年齢や体力、既往歴などを考慮し、
安全で効果的な運動内容を提案します。
次に、継続しやすい環境が整っています。
健康増進施設では、グループエクササイズや
健康教室などのプログラムが充実し、
同じ目的を持つ仲間と一緒に運動できます。
一人で黙々と運動するよりも、
仲間と励まし合いながら続けた方が、
モチベーションを維持しやすくなります。
また、医療機関との連携が可能な施設もあります。
指定運動療法施設と認定された健康増進施設では、
医師との情報共有体制が確立されています。
運動処方箋に基づいた指導を受け、
実施状況を定期的に医師に報告し、
医療と運動の連携が実現しています。
さらに、患者さんに安心感を提供できます。
「厚生労働省認定」といった公的な基準を満たせば、
患者さんも安心して運動を始めやすいでしょう。
「運動はどこで?」といった不安を解消し、
具体的な行動につなげることができます。
運動処方箋と健康増進施設の連携実践
健康増進施設との連携を効果的に進めるには、
いくつかのポイントがあります。
まず、患者さんの状態と目的に合った施設の選定です。
運動療法が必要な患者さんには、
指定運動療法施設の認定を
受けている施設を紹介します。
疾患予防や健康維持が目的の場合は、
運動型健康増進施設を選択します。
地域によっては温泉利用型健康増進施設もあり、
温泉療法と運動を組み合わせることも可能です。
次に、施設への情報提供を行います。
運動処方箋がある場合は、
処方内容を施設に伝えます。
禁忌事項や注意点(血圧管理、低血糖対策など)も
明確に伝え、施設側も安全な指導を提供できます。
可能であれば、診療情報提供書を作成し、
患者さんの病歴や現在の治療内容を共有します。
施設での運動開始後は、
実施状況を確認する仕組みを作ります。
患者さんに運動日誌をつけてもらい、
外来診療時に確認する方法もあります。
施設によっては、定期的な報告書を
医療機関に提供するサービスを
行っているところもあります。
月1回程度、運動実施回数はもちろんのこと、
体重・血圧の変化などの情報を受け取ることで
患者さんの運動習慣の定着状況を把握できます。
定期的に処方内容も見直せます。
患者さんの体力向上や健康状態の改善に応じて、
運動内容を調整できるのです。
外来診療時に運動の実施状況や効果を評価し、
必要に応じて新しい目標を設定します。
施設と連絡を取り合いながらも、
長期的な健康管理をサポートします。
連携事例:メタボリックシンドロームCさん
実際の連携事例をご紹介します。
仮にCさん(52歳男性)とします。
特定健診でメタボリックシンドロームと判定。
腹囲92cm、血圧138/88mmHg、空腹時血糖110mg/dL、
そして、中性脂肪180mg/dLという状態でした。
特定保健指導の対象となり、
食事と運動による生活習慣改善が必要でした。
しかし、Cさんは「運動が苦手」と消極的です。
そこで、健康増進施設認定を受けた近隣の施設を紹介しました。
施設では、健康運動指導士が初回面談を行い、
Cさんの生活スタイルや運動歴をヒアリング。
「運動はあまりしたくない」気持ちを受け止めた上で、
無理なく続けられるプログラムを提案しました。
週2回、1回30分のウォーキングマシンでの有酸素運動と、
簡単な筋力トレーニングから始めました。
施設のグループエクササイズにも参加。
同世代の仲間と一緒に体を動かすことで
楽しさを感じられるようになりました。
6ヶ月後の健診で、腹囲85cm、血圧128/80mmHg、
空腹時血糖98mg/dL、中性脂肪125mg/dL。
すべての項目で改善が見られました。
Cさんは
「スタッフが励ましてくれるから続けられた。
一人だったら絶対に無理だった」
と話してくれました。
健康増進施設の専門的なサポートによって、
運動が苦手な患者さんも継続できる環境が整いました。
特定保健指導と健康増進施設を組み合わせ、
生活習慣病の予防・改善を実現できたのです。
まとめ
健康増進施設認定制度は患者さんに安心して、
運動環境を紹介するための有効な基準です。
専門スタッフによる安全な指導、
継続しやすいプログラム。
そして、医療機関との連携可能性。
この3つのポイントです。
運動処方箋を作成後「運動はここで」と、
具体的な選択肢を患者さんへ提示すれば、
運動療法の成功につながります。
健康増進施設は、運動療法が必要な患者さんだけでなく、
疾患予防や健康維持を目指す方にとっても、
継続的な運動習慣を身につける場として最適です。
運動処方箋の「継続実行」を支える環境として、
健康増進施設との連携をぜひご活用ください。


