指定運動療法施設で活躍するために:運動処方箋を実践する専門スキル

2026年01月12日 | メディカルフィットネス

指定運動療法施設で働くトレーナーには、
一般的なフィットネスでの指導と
少し違った専門性が求められます。

医師が作成した運動処方箋を正確に理解した上で、
実践可能なプログラムに変換する技術が必要です。

また、医療機関との連携を通じて、
患者さんの安全を確保しながらも
効果的な運動指導の提供が求められます。

本記事では、指定運動療法施設のトレーナー活躍に必要な、
運動処方箋を実践する専門スキルについて解説します。

医療と運動の橋渡し役としての知識と技術を、
どう身につけるか具体的に見ていきましょう。

指定運動療法施設トレーナーに求められる役割

指定運動療法施設のトレーナーは、
医療連携の最前線に立つ専門家です。

最も重要な役割は、

処方箋には、運動の種類(有酸素運動、筋力トレーニングなど)、
強度(心拍数や自覚的運動強度)、時間(1回あたりの運動時間)、
頻度(週に何回実施するか)などFITT原則に基づく指示が記載されています。

正確に理解した上で、患者さんへの適切な説明が基本です。

そして、医療的な背景への理解も不可欠です。

糖尿病、高血圧、心疾患など、
患者さんが抱える疾患の特性を理解し、
それぞれに応じた配慮を行います。

例えば、糖尿病の患者さんは低血糖のリスクに注意し、
運動前後の血糖値確認や補食の準備を促します。

高血圧の患者さんだと運動中の血圧管理を行い、
基準値を超えた場合は運動を中止します。

心疾患の患者さんには、自覚症状(胸痛、息切れなど)の観察を細かく行います。

安全管理の徹底も重要な役割です。

運動中の体調変化を見逃さず、
患者さんの表情や動作への観察。

緊急時の対応手順を熟知し、AEDの使用方法はもちろん、
医療機関への連絡方法をしっかり身につける必要があります。

また、禁忌事項や中止基準を理解し、
基準を超えた場合は躊躇なく
運動を中止する判断力も必要です。

さらに、医師への的確な報告も重要です。

運動実施状況、運動時のバイタルサイン(血圧、心拍数)、
自覚症状、体重や体組成の変化などの記録を定期的に医師に報告します。

報告書は、医師が患者さんの運動療法の効果を評価し、
処方内容を見直すための重要な情報源となります。

運動処方箋を実践プログラムに変換する技術

運動処方箋を受け取ったら、具体的な実践プログラムに変換しましょう。

例えば「週3回、中強度有酸素運動30分」との
処方があれば具体的な運動種目を選定します。

トレッドミル、エアロバイク、エリプティカルマシンなど、
患者さんの体力や好みに合わせて選択するのです。

「中強度」を心拍数で示す場合、
カルボーネン法を用いて目標心拍数を算出します。

例えば60歳の患者さんで安静時心拍数70回/分の場合は、
中強度(50〜60%強度)の目標心拍数は115〜125回/分程度となります。

糖尿病の患者さんでは、有酸素運動に加え、
筋力トレーニングを組み合わせて、
インスリン感受性の向上を図ります。

高血圧の患者さんでは、
等尺性運動(息を止めて力を入れる運動)を避け、
リズミカルな有酸素運動を中心にします。

心疾患の患者さんは、ウォームアップとクールダウンが特に必要です。

そうすれば、急激な負荷変化を避けられます。

個別性への配慮がポイントで、膝や腰に痛みがある患者さんは、
関節への負担が少ない水中運動やエアロバイクを提案します。

また、運動経験が少ない患者さんには、
簡単な動作から始め、徐々に負荷を上げましょう。

逆に、運動習慣がある患者さんには、
飽きないよう多様な種目を取り入れます。

段階的な負荷設定も大切です。

初回は処方された強度よりも低めに設定し、
患者さんの反応で徐々に目標強度へと近づけます。

焦って強度を上げてしまうと、
疲労や筋肉痛で継続が難しいので、
ここは慎重に進めましょう。

継続支援のための実践スキル

運動処方箋を実践するだけでなく、
患者さんが長期的に継続できるよう
サポートすることが最も重要です。

モチベーション維持へのお声かけは、継続支援の基本です。

運動中に

と声をかけると、患者さんは見守られている安心感を得ます。

小さな変化でも

と具体的に褒めることによって、達成感を感じてもらいます。

セルフモニタリング指導も効果的です。

運動日誌をお願いして、実施回数や体重、
血圧などを記録してもらうのです。

自分の変化を目で見て確認でき、
継続の動機づけになります。

また、記録を一緒に振り返りながら、

と成果を共有するのも効果的です。

生活習慣への組み込み支援も良いでしょう。

「週3回」処方を実現しやすくするため、
患者さんの生活リズムに合わせる形で
実施する曜日を一緒に決めるのです。

「火曜・木曜・土曜の午前中」など、
具体的なスケジュール設定で、
グッと習慣化しやすくなります。

また、施設での運動だけでなく、
自宅でできる簡単なストレッチや歩行を提案し、
日常生活全体で活動量を増やす工夫を伝えます。

忘れがちですが、中断予防の早期介入も同じくらい重要です。

いつも来ていた患者さんが2週間以上来ない場合、電話で声をかけます。

と確認。

再開のきっかけを作ります。

中断の理由が「忙しくて時間がない」という場合は、
短時間のプログラムを提案するなどして対応します。

実践事例:高血圧患者Bさんへの指導

指導事例をご紹介します。

Bさん(65歳女性)。

高血圧(収縮期血圧150mmHg前後)で降圧薬を服用。

医師から「週3回、中強度有酸素運動30分」の運動処方箋が出されました。

初回の面談で、Bさんの生活状況を詳しく聞きました。

  • 膝に軽い痛みがある
  • 運動経験がほとんどない
  • 午前中なら時間が取りやすい

ことが分かりました。

そこで、膝への負担が少ないエアロバイクを中心に、
週3回(火・木・土の午前)のプログラムを組みました。

初回は10分間、軽い負荷からです。

2週間後には15分に延長し、
4週間後には処方通り30分を達成。

運動日誌には、毎回の血圧と体重、
運動後の気分を記録してもらいました。

「今日は調子が良かった」「いつもより疲れた気がする」など、
自らの言葉で書いてもらうことで体調管理の意識が高まります。

3ヶ月後、Bさんの血圧は平均135/80mmHg程度まで低下。

と前向きな言葉が聞かれました。

医師への報告書には、運動実施率95%(週3回をほぼ達成)、
血圧の変化、自覚症状などを記載し処方の効果を共有しました。

まとめ

指定運動療法施設のトレーナーは、運動処方箋を正確に理解し、
実践可能なプログラムに変換する専門性が求められます。

FITT原則の具体化や疾患別のプログラム設計、
個別の配慮技術で、医師の処方が実行できます。

また、継続支援のスキルを磨くことによって、
患者さんの長期的な運動習慣をサポートできます。

運動処方箋を「実行可能な形」に変換し、
患者さんの継続を支える専門家として、
医療連携トレーナーの価値を高めましょう。

Doctor’s Fitnessでは、医療機関と連携した運動習慣定着プログラムを提供しています。
患者さんの継続的な健康管理をお考えの医療スタッフの皆様、お気軽にご相談ください。

【監修】宮脇 大(みやわき ひろし)
Doctor’s Fitness代表医師/循環器内科医
元大阪大学医学部附属病院/循環器内科(重症心不全・心臓移植)スタッフ
大阪府スマートヘルスプロジェクトアドバイザー

本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の個人の状態に対する医学的アドバイスではありません。連携モデルの導入にあたっては、各医療機関の方針や地域の状況に合わせて調整してください。

2026年2月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
232425262728  

アーカイブ

最近の投稿