人を通じて自分を知る
私達は、人との出会いや関わりを通じて様々な体験をし、思い、感じています。
人と関わることは、他者を知り理解しようとすることだと考えられがちですが、それと同時に、人と関わるとは、自分という存在を知ることでもあります。
人は、一人きりでは自分という存在を深く知ることは出来ません。
自分を知るためには、自分を映し出して教えてくれる鏡が必要です。
物理的な外見であれば、鏡の前に立って自分を見ることによって、その顔や全体像を知ることが出来ますよね。
しかし、心の中は目には見えませんので、物理的な鏡でも映し出すことは出来ません。
そこで鏡の役割を果たすのが、あなたの出会う人々ということになります。
自分と他者とは関係ないと思われがちですが、他者とはあなたの心の一部を映し出して自分に教えてくれる、有難い存在でもあります。
例えば、あなたがある人を嫌いだとしましょう。
あなたは、その人の在り方や言動に嫌悪感や不快感を持つ自分がいることに気付くと思います。
それはつまり、あなたが「〇〇という行動はしてはいけない」とか、「〇〇であることはいけないことだ」というような価値観や観念を持つことを、相手が教えてくれているということです。
あなたが何の価値観や観念も持っていなければ、相手の在り方や言動を見て、嫌悪感や不快感を覚えることはありませんよね。
このように、他者とはあなたの中にあるものを映し出して教えてくれる存在にすぎず、その他者は嫌な人でも悪者でもありません。
ただ単に、あなたが許せないと思っていることを映し出して見せてくれているだけなのです。
しかし、私達には他者を自分の価値観や観念に沿ってジャッジしてしまう傾向があります。
自分が不快だと感じたことの責任を相手に押し付けてしまうようになり、「あなたが私を不快にさせた」と感じるようになるのです。
そうすると、鏡である相手に怒りや不満を抱き、ストレスを抱えることになるので、最終的には自分自身のつらさや生きづらさに繋がってきます。
人との関わりは、全て等しく自分自身を知るためのものだと捉えることによって、あなたの中にはどのような自分が見えてくるでしょうか?
人は、自分が思っている以上に多様な一面を持つ存在です。
人との関わりの中で見えてきた自分の一面を、「こういう自分もいるんだね」とありのまま認められるように意識してみましょう!
自分の知らない自分は沢山いる
上記では、人との出会いや関わりは、自分を知ることだとお話しました。
この世界には、一人として同じ人がおらず、その個性や価値観も様々です。
一生で出会うのは、ほんの一握りの人ですが、人との出会いの分だけ自分との出会いがあるのだとしたら、それは凄いことだと思いませんか?
同じ人との関わりであっても、その時の状況やタイミングによって、見てくる自分は違います。
そうすると、自分とは無限に広がるグラデーションのような存在なのかもしれないとさえ思えてきますが、果たして私達は自分のことをどの程度知ることが出来るのでしょうか?
心理学では、自己分析を行う際にジョハリの窓というモデルを用いることがあります。
このモデルでは、4つの側面から自己理解を試みます。
★一つ目は開放の窓
これは自分も他者も知っている自己のことであり、この領域が広がることで他者とのコミュニケーションも円滑になります。
★2つ目は秘密の窓
自分だけが知っていて、他者にはまだ知られていない自己のことです。
トラウマやコンプレックス等、人に知られたくない領域であるため、この領域が広いとコミュニケーションも緊張感が高まります。
★3つ目は盲目の窓
自分は知らないけれど、他者は知っている自己のことです。
この領域が広いと、自分のことがよく分かっていないということになるため、他者との関わりの中で気付き広げていくことが大切になります。
★4つ目は未知の窓
自分にも他者にも知られていない未開発の自己のことです。
新しいことに挑戦したり、今まで関わったことのないような人達との出会いによって見えてくる領域です。
私達は自分のことなら自分が一番よく知っていると思いがちですが、これらの領域は誰しも持っており、実は知らない自分は沢山います。
潜在意識という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、人が自分で自覚出来ていることは5~10%程度しかなく、残りの90~95%程度は自分では意識できないものが占めていると言われています。
そうなると、私達はまだ気付いていない自分と出会うことで、より自分の世界を広げられる可能性があります。
そのためにも、人との出会いは自分との出会いという意識を持ち、心を閉ざさずに関わるようにしたいものですね。
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