自分という意外な盲点
「自分がされて嫌なことは、人にしてはいけない」という言葉を聞いたことがあると思います。
このことは、対人関係を良くするコツだと言われてきましたし、とても大切なことです。
実際に日々意識して、人には自分がされて嫌なことをしないようにと心がけている人もいるでしょう。
では、「人にされて嫌なことは、自分にしてはいけない」ということはいかがでしょうか?
同じようなことを言っているように思えるかもしれませんが、実は違います。
こちらは、一番本質的で重要なことなのです。
あなたは、人に無視されたり、雑に扱われたら、嫌な気持ちがしませんか?
そのような扱いをされれば、嬉しいとか、心地いいと感じる人はいないと思います。
しかし、もしも現実でそのような場面を多く経験しているのであれば、それはまず自分で自分の思いを無視や否定したり、とるに足らないものかのように扱っている証拠かもしれません。
もしそうならば、自分が嫌がることを先にしているのは、他人ではなく、自分自身ということになります。
これは、人にされて嫌なことを、自分にしてしまっているということです。
例えば、人から自分の欠点や至らなさを指摘されたら、傷ついたり怒りがわいてくるとします。
けれどそのような人の多くは、「自分のここがいけなかった」「こうすべきではなかった」「こんなことも出来ない自分がいけない」などのように、自分の過去の言動のダメなところをあげ連ねているかもしれません。
人からされたら傷ついたり怒りがわくことなのに、自分自身には平気でしてしまっているということになります。
これは、人が自分を傷つけるのは悪くても、自分で自分を傷つけるのは良しということですよね。
人は、一番身近にいて、一体化している自分という存在に対して、無頓着で鈍感になりがちです。
幸せになりたいと思い、苦しみを経験したくないと思っているのに、自分自身を拒絶して嫌がらせしたり、愛情や優しさを向けられず、自分を雑に扱ってしまうのです。
そうすると、他者や世界から自分に対して与えられるものを待つだけになりますが、それで果たして幸せや満足を感じられるでしょうか?
世界は自分の内面を映し出す鏡
私達が五感で感じているこの世界と、自分の内面である心の在り方といったものは、深い関係があります。
「世界とは自分の内面を映し出す鏡である」とも言われていますよね。
自分の内面とは、自分が自分をどのように見て扱っているかということや、他者や世界に対して持っている思いこみ等のことをさします。
つまり、自分自身をどう扱い、世界をどのようなものと思い込むかによって、見えてくる世界や体験の仕方も変わるということです。
例えば、自分を否定的に扱う人は、自分は否定されて当然な存在だとみなしていることになりますから、世界からも否定されていると感じやすくなります。
他者から些細な指摘を受けただけで、“私はやっぱり否定される存在なんだ”と解釈し、どんどん否定的な世界を体験することになります。
この考え方に立つならば、周りで起きてる出来事は、あなたの内面で起きていることを教えてくれる教材のようなものです。
人から嫌なことばかりされるのならば、自分が嫌がることを無意識に自分にしてしまっている証と考えられます。
このように考えると、世界や他者はあなたに今の自分の状態を教えてくれているだけで、本当の問題は自分の内側にあることが分かります。
「自分がされて嫌なことは、人にしない」というのは、自分をヒントにして、他者という自分の外の存在に重きをおいています。
「人にされて嫌なことは、自分にしない」というのは、他者という存在をヒントにして、自分に重きをおいています。
一見同じように見えますが、重きのおき方が逆になっているのです。
問題の中心が自分にあるのであれば、まずは自分自身の在り方や扱い方を見直していく必要があります。
そのため、あなた自身が、日頃人にされたら嫌なことを、自分にしていないかを意識し、改善していくようにしてみましょう。
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